「私は汗かきだから代謝がいい」という言葉を聞いたことはありませんか?いつからか「汗をかくと代謝がよくなる」、「汗をかくと脂肪が燃焼される」といったイメージが広まるようになりましたが、これは必ずしも正しいとは言えません。
発汗と代謝は健康を考える上で、どちらも重要な身体機能なので、それぞれのメカニズムを正しく理解することはとても大切なことです。ここでは、発汗と代謝についてご説明していきたいと思います。
代謝と発汗、それぞれの役割とは?
人は食事から栄養素を吸収し、体内でエネルギーに変え、活動することでエネルギーを消費します。このエネルギーの吸収から消費までのサイクルが代謝です。
歩くなどの身体を動かすことはもちろん、呼吸や内蔵の活動においても代謝によるエネルギーを消費して行なわれています。
代謝が良いとは、このエネルギーの消費活動が活発に行なわれていることを指します。そのため、代謝が良いと食事で吸収したエネルギーを溜めずに消費するので、太りにくい身体であると言えます。
一方、発汗は、気温の上昇や運動によって上昇した体温を、適切な体温まで下げるために、汗と共に熱を逃がす体温調節が本来の機能です。汗をかくこと自体にもエネルギーは消費されますが、その量はごくわずかで直接代謝の促進につながるとは言えません。
良い汗と悪い汗
発汗そのものが代謝につながるわけではありませんが、発汗を促す行動は、代謝の促進につながります。これの最たるものが運動でしょう。運動することで代謝量が増え、同時に体温も上がるため発汗も促されます。
また、運動による発汗は体温調節だけでなく、体内の老廃物の排出や血行促進などの効果も得られます。この老廃物の排出や血行促進の効果により身体が活性化されるため、結果、代謝の促進への効果が期待できます。
このように運動でかく汗は代謝につながる「良い汗」と言えます。また、サウナによる発汗も運動程の代謝は行なわれないものの、老廃物の排出や血行促進の効果は期待できます。これを見ると「汗をかくと代謝がよくなる」という言葉は間違いではないでしょう。
しかし、運動をしていないのに大量の汗をかいたり、気温がそれほど高くない環境でも汗をかくような人は要注意。運動を伴わないので、当然代謝は行なわれません。
また、このような汗をかく人は汗を排出する汗腺の機能が低下しており、老廃物の排出も行なわれず、血行の促進にもつながりません。
多くの時間を空調の効いた部屋で過ごし、慢性的な運動不足の生活を送る人が増えている現代では、このような「悪い汗」をかく汗かきの人が非常に多くなっています。
このような場合では、「汗かきだから代謝がいい」という言葉は当てはまりません。さらに何らかの身体の疾患が原因で汗をかいている可能性もあります。
このような悪い汗を過剰にかいている人は、代謝がいいから、と放置せず、専門医に相談して汗かきを改善することが必要になります。