私たちは眠っている間に、コップ一杯ほどの汗をかくと言われており、睡眠中の発汗は誰にでも起こる生理現象のひとつです。しかし、あまりに寝汗がひどい場合は、多汗症の疑いがあります。自分がどんな寝汗をかいているか、この機会にチェックしてみましょう。
今回は、一般的な寝汗と多汗症の違いについてご紹介します。
一般的な「寝汗」とは
私たちが眠りにつく直前、視床下部にある発汗中枢は、脳細胞の働きを抑えるために体温を下げようとして汗をかかせます。これは、深い眠りに誘うための自然な発汗です。
また、レム睡眠の状態にあるときに、激しく感情を揺さぶられるような夢を見ると、中枢神経が刺激され、汗をかきます。レム睡眠は朝方に向けて増加するため、「コワイ夢を見て、朝起きたら汗びっしょり」という事態が起こるのです。
もちろん、これは病気ではありません。これらの発汗は、人間にとって自然な生理現象であり、私たちの体が正常に働いている証なのです。
多汗症の「寝汗」は何が違うの?
眠る直前や朝方にかく寝汗は、健康な人に起こる自然現象です。しかし多汗症の場合は、真冬でもパジャマがじっとりと濡れるほど、大量の汗をかいてしまいます。眠っている最中に、頭や首、胸、腰の周りなどから持続的に大量にかく汗を、盗汗(とうかん)と言います。
軽度の盗汗は、健康な汗でサラサラしているのに比べ、重度の盗汗は粘度が高く、ベトベト、ネバネバとしているのが特徴です。多汗症の人がかく寝汗は、重度の盗汗であることが多いと言われています。
イヤなベトベト汗「重度の盗汗」の原因は?
盗汗は、血漿(けっしょう:血球を除いた液体成分)を多く含んだ濃度の高い汗です。そのために蒸発しにくく、時間が経過してもベトベトとした感触が残っています。さらに、大量の汗と一緒に体内のミネラル分が放出されてしまうため、寝起きにも関わらず疲労を感じることがあるのです。
盗汗の原因としては、自律神経失調症や更年期障害などがあげられます。これらの病気が、体温調節機能をつかさどる中枢神経の働きを乱し、多汗の症状を引き起こすとされています。自分の寝汗に不安を感じる方は、病院に相談すると良いでしょう。
多汗症による寝汗を防ぐには
過度な寝汗には、精神安定剤などによる「薬物治療」や、カウンセリングによる「精神分析療法」、レーザーや高周波によって汗を出すエクリン腺の働きを抑制する治療など、さまざまな改善方法があります。
そのほかの自分でできる治療法としては、自律神経の動きをコントロールする「自律訓練法」や、脳と心を落ち着つかせるための「呼吸法」などが知られています。
また、多汗症を気にするあまり、「汗をかくのがイヤだから」と水分を控えてしまう人がいますが、これは絶対にNG!体の水分が減ると、余計にベトベトした汗が出るだけでなく、脱水症状を引き起こす危険性もあります。
ひとくちに寝汗と言っても、原因や治療法はさまざまですので、自分に合った改善方法を探すことが大切です。汗をかきやすい体質の人は改善が難しい場合もありますが、気にしすぎないことも治療のひとつ。
なるべく前向きに捉えるよう心がけましょう。